2015/11/27 前編

様々な感情を全て引き受けて、まだ数回しか袖を通した事のないスーツを身に纏う。
長男の結婚式用に買った真新しい靴を履き、完璧な鎧姿となった僕は娘の手を引きいざ出陣。
そんな僕の思いとは裏腹に娘は先日購入したワンピースを着て上機嫌。
妻は珍しく薄っすらと化粧をしてくれている。

誰もが
気にしなくていいんじゃない…
誰もそんなに気にしてないよ…

的な慰めのコトバ。

でも、なんか視点が違う。

怒りに支配される自分が嫌で、この数年間楽しい記憶の上塗りを積極的に、時にはこれでもかってぐらい試み実行してきた。
それはとても苦しく、惨めな気分に苛まれる事もしばしば…

それを思い出しに行くと言う行動。

気にするとかしないとか、服のボタンが一つ取れかかっているような、気にしなくてもいい話しとはわけが違う。

自分自信の嫌いな部分が湧き上がってくるかもしれない…それと向き合うという覚悟。

他人の目の問題ではなく。
僕自身が僕を扱う問題。

こんな事で精神破綻したりはしないが…

一生付き纏うであろうこの感情が今だに鬱陶しくて鬱陶しくて…

会場に到着する。
なぜだろう…嫌いなタイプの人が多い。
歩き方とか、服のセンスとか、立ち振る舞い方とか、話し声のトーンとか…

宴の間、僕に寄って来る人や、声をかけて来る人は誰もいない。
一時期の状況とはまるで違う。
自分で自分を晒し者にしてしまったように感じになりながら、一人手酌でビールを飲む。

其れでも懐かしい顔を見かけたら僕の方から声を掛けた。
辛くはなかった。
想定できていたし、なによりもう慣れている。

ただ一人の方だけが他とは違った。
彼は僕と会話をする姿を他人へ見せる事は、おそらく本人にとってリスクになるだけであろうに…
彼は敢えて僕に接触し親しげに会話をする。
明らかに僕にはパフォーマンスに見えた。
他の者へ対する自分の意思を態度で表現するかのように見えた。
リターンが一切期待出来ないただのリスクを敢えて彼は犯し続けた。

僕にはその行為がどれほどありがたい事であったか…

後編に続く…

作り物
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