2015/1/31 辻褄合わせ

まだ子供だった頃、あるロックバンドの奏でる音楽に胸を撃ち抜かれた。
彼等のStyleやユーモアのセンスが何よりも信頼出来た。
何故そう感じたのかは暗黙知でしか表現できない。

その頃を境に僕は学校で教わるものに全く興味を失い勉強をしなくなった。
それまでは勉強が好きな方だったから、1学年10クラスのマンモス校で常に10番以内の成績を収め、オール5を取る自称、「優秀」な子供だったが潔く学問を捨てたんだ。
当然成績はみるみる悪化して行ったよ。
進学を決める時、まるで興味がない僕は進学対する自分の意思はなくどうでもよかったんだ。
人様なりに振舞う事で彼等が満足するのなら、そう考え半ば適当に進学先を決めた。

進学先には入学前から反りが合わず、今でも嫌いな学校だ。
又、理由もなくそこに通学する学生や教師を僕は蔑んで見ていたように記憶している。
そして、可能な限り彼等との接触を避けた。
そこでは、音楽の繋がり以外の友達は一人もいなかった。
教室では誰とも口をきかない日などザラだったよ。

学園生活で記憶に残っているのは、授業中は殆ど寝ていた事と、授業中脱走を計り逃亡するが、途中教師に発見、拉致され柔道場でボコボコにされた事ぐらいかな。
教科書など開いた事はなく、担任の名前も級友の名前も全く思い出せない。

僕は3年間ひたすらアルバイトとギターばかり握っていた。

何が僕をそこまで頑なにさせたのかは今でもわからない。

その後の社会生活でも自分が場に馴染めず浮いている感覚は何処に行っても付きまとったんだ。
その空気を読み取る能力だけは年々鍛われ、正確さを増していった。
まぁ其れなりに寂しくも苦しくもあったように思うけど、音楽があれば耐える事ができていた。

ただ、ある数年間だけ僕に社会的地位らしきものが付いた時期があり、その頃だけは社会に馴染めている気になっていた。
皆んなが僕の話しを聞いてくれた。
それは、僕にとって始めて味わう有難い時間だったよ。
他人を可愛いとさえ思える自分がいた。
僕は集団と言う苦手な場所を克服しようと努力できていた。

が、本質は何も変わらない。

社会的地位らしきものがなくなるとそれ以前の感覚がみるみる戻ってきた。

集団の中にいてポツンと一人になる感覚。
それは、何処に行こうが、何処にいようが度々訪れる。
集団の中にいる自分がとても気持ち悪く、苦しくなり、ソッポを向いてしまう。
その結果望んでいない孤独感を味わう事になる。
毎回このパターンを繰り返してきた僕は、良くも悪くも慣れている。
所詮「こんなもんだろう」とやり過ごせるようになり、自分でも手が付けられない。

只、以前と違う事もある。
少し大人になった僕は、馴染めない原因は自分に何らかの欠陥があるのだと認める事出来ている。

ただ、改める気は更々ないのだが…

冤罪となり服役した者は牢獄で自分に何を言い聞かせるのか…
無実であるのに牢獄にいる整合性のない現実が耐えられなくなり、「自分がやったんだ」と自分に言い聞かせ、事実と現実の辻褄合わせをすると言う。
なんとも皮肉な話しだ。

僕が子供の頃から社会に馴染もうとしなかった結果が今なんだ、そう言い聞かせ、辻褄合わせの作業が少しできたように思う。

それでも尚、改める気が起こらないから厄介な男だ。

そんな事を考えて焼酎を飲んでいると…長男から電話がはいる。

翌日につづく…
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